イカの生態

アオリイカやコウイカなどイカ全般の「 視力、視野、視軸、色覚、立体視 」について!

イカの生態

今回は、イカの視力、視野、視軸、色覚、立体視などのイカの目の能力についてお話します。
皆さんは、アオリイカやコウイカってその日その日によって釣れる餌木の種類が違ったり、どんなにアピールしても釣れない時ってありますよね。さて、イカはいったいどんな景色で獲物をとらえているのでしょうか?

内容

■イカの目の構造
■視力、視野、視軸、色覚、立体視について

目の構造

イカの眼球(上)とヒトの眼球(下)
出典
おいしいイカをさらに美味しく 全国いか加工業協同組合

イカの目は丸い球体でできており、カメラ目と呼ばれます。動物の目の種類は、大きく分けてカメラ目、単眼、複眼の3種類あります。人の目もカメラ目に該当します。

カメラ目は、その構造がカメラの構造と近いため、カメラ目と呼ばれます。
哺乳類のカメラ目の構造は下記のようになります。

・カメラ・・・目
・ボディー・・・強膜(しろ目)
・フィルター・・・角膜(くろ目)
・レンズ・・・水晶体
・しぼり・・・虹彩(こうさい)
・フィルム・・・網膜(もうまく)

視力の調節は、ほかの海洋生物と違いレンズの厚さを変えることができないので、前後に動かして調節しています。

イカの目の構造は人間と近く、角膜、前房、水晶体、硝子体、網膜という構造をしています。これは、収斂進化(しゅうれんしんか)と言い、別の環境で進化したにもかかわらず同じ構造になった進化をそう言います。

イカの目による物体を見るしくみは、角膜、レンズを通って入ってきた光が網膜上にある光受容体(視細胞)で光を受け脳へ伝達するという、人と同じ流れで行われます。

レンズは2つの部分が結合した二重構造になっており球形をしています。レンズが二重構造になっているのは眼の形成過程によるものです。
焦点の調節方法は、人は水晶体(レンズ)の形が変形する事で焦点を調整しますが。イカはレンズを変形できないためレンズを前後に動かす事で焦点合わせています。

アオリイカの視力

アオリイカの視力は一般的に0.6~0.7と言われています。
三重大学の研究では、
アオリイカ0.63(別の論文の理論式では0.89または0.69などバラつきがある)
・ミミイカ0.32
・スルメイカ0.64
・スジイカ0.90
・ソデイカ1.37
というデータとなっています。

参考文献 三重大学 2007 修士論文 イカの視覚に関する基礎的研究 牧野朗彦氏

その他のデータでは、コウイカは0.89

2018年大人1000人に調査したアンケートで大人(20~69歳)の裸眼視力の平均が「0.5」という結果になっています。イカよりも視力が悪い人が増えているという状況です。

一般的な視力検査
視力0.6は、一般的な視力検査表の○に切れ込みが入った絵(ランドルト環)という検査方法で、5m離れた距離で、直径12.5mm、線の太さが2.5mmの円にある、2.5mmの切れ目の方向が分かるのが、視力0.6です。

ちなみに沿岸に生息している魚類の視力は約0.05~0.3とアオリイカよりも低くい視力となっています。

アオリイカの「視野と視軸」

アオリイカの視野は片目で約180°の視野があると言われています。両眼を足すと360℃になりますが、左右の目には間隔が空いており、基本的には前方を見るため真後ろは見えません。

視軸は水平よりやや下を向いており、上方の物より下方にあるものの方が見やすくなっています視軸が下を向いている理由として捕食時に餌の後方やや上方より覆いかぶさるように捕食することが多いためだと思われます。

視力は良いが「色覚は弱い」

アオリイカの色覚、これがアオリイカが餌を判断し捕食するときに一番使っている能力です。

近年のアオリイカ研究ではアオリイカのロドプシン(光受容器細胞の色素で夜間視力で重要となる)の最大吸収波長は494nm という研究結果が出てきます。一般的にサイトに載っているオリイカの色覚は450nm~500nmで色は青から青緑までと言われています。(参考文献 三重大学 2007 修士論文 イカの視覚に関する基礎的研究 牧野朗彦氏)

スルメイカは495nmまで、コウイカは508nmまでの最大吸収波長です。
ちなみに、紫外線とは波長が10~400 nmの波長域を差しエギで言うケイムラ発光ボディで使われているものです。

上記でもいうようにアオリイカは色の認識があまりよくありません。しかし、コントラストを認識する能力に優れているため、周囲の色、エギ自体のコントラストを手掛かりに捕食します。

そのため、エギにはベースカラーとボディカラーの2色が使用されコントラストが良く見えるように作られています。

また、天候や海の濁りなどの影響も考慮され様々な色が作られているのがエギの種類が豊富な理由です。

色弱でも獲物を捕えられる「立体視」

2020年に、アメリカの大学の実験によりイカが立体視で対象を認識していることが証明されました。

立体視とは、両目の輻輳(両目の視野の重なった部分)の視差によって得られる情報をもとに、脳内で対象との距離や大きさ、厚み、重なり、勾配といった3D(3次元)とまではいかない2.5D(2.5次元)を視覚で認識することを言います。

<立体視の例>

1.まず、絵に顔を近づけ、遠くを見る視線にし、赤い点が4つに見えるようにします。
2.絵をゆっくりと離し、4つの赤い点の内側の2つが重なり、3つに見えるようにします。
3.そのまま見続けると、自動焦点機能(対応点の融合)が働き、透明感が出てきます。その時に、立体視は成立しています。
4.点が3つのまま、ゆっくり離すと、立体画像の全体が見えてきます。あわてて絵を見ると、失敗するので注意してください。

引用:千寿製薬株式会社

実験は、アメリカ・ミネソタ大学のトレバー・ワーディル氏らにより実験が行われました。
内容は、コウイカに3Dメガネをかけさせ、水槽の前の画面に餌となるエビを3D映像で見せるというものです。
結果、これを目にしたコウイカは、触手を伸ばして画面のエビを捕食しようとしました。
このことから、色覚が悪いとされているイカ類でコウイカには眼球を前方に向け輻輳運動(両目が内側を向く動き)による眼球視差によって物体の遠近感や距離の把握、など様々状況や物体をモノクロや単色の2D(本やテレビ画面のような2次元)ではなく、モノクロや単色ではあるが3D(2.5D)として物体を捕えることができているという結果になりました。

参考:Science Advances

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